捕虜が全員…自害だと?

「どうやって?身体検査はしたはずでしょう?」

驚いたのも一瞬、あっという間に冷静さを取り戻したアイズが、華弦に聞いた。

「はい。しかし…どうやら、奥歯に毒薬を仕込んでいたようで…それを飲んで…」

「…成程」

…生きて虜囚の辱めを受けず、ってか。

くそったれな連中だ。

そりゃ、『青薔薇連合会』に囚われた時点で…生きて日の目を見ることは不可能だが。

だからって、毒薬を飲んでまで自害するとは…。

そこまでしても…俺達に情報を渡したくなかったのか。

「申し訳ありません。もっと注意していれば…」

「いや、君のせいじゃないよ」

謝罪しようとする華弦を、アイズが制した。

そうだな。

まさか、捕らえてすぐに自害するとは…そんな度胸のある連中だとは思ってなかった。

無理もない。

「死んでしまったなら仕方ない。死体を尋問する訳にはいかないしね」

死人に口無し、って言うもんな。

腹立たしいが、死体を蹴っ飛ばしても何の情報も出てこない。

別の方法を考えるしかなかろう。

「押収した資料を調べよう。それから、もう一度徹底的に、ここを調べるように」

ここ…つまり、『霧塵会』の本部だな。

「ルルシーとルリシヤが、あらかた探してくれたとは思うけど…」

「あぁ…一通り確認したな」

怪しいものが見つかったのは、冷蔵庫の中の資料だけだ。

リーダー達の態度を見るに…他の場所にも、秘密の情報を隠しているとは思えないが。

何もないという保証はないし、万が一ということもある。

人手を増やして、もう一度探してもらえるなら有り難い。

「他にも、何か残っていないとも分からないしね」

「分かりました。すぐに捜索班を手配します」

「宜しくね」

アイズに頼まれて、華弦はぺこりとお辞儀をして立ち去った。

『霧塵会』本部の二度目の捜索は、華弦に任せておけば問題ないだろう。

運が良ければ…『霧塵会』が隠していたかもしれない、新兵器の実物が見つかるかも…。

…それにしても…。

「…ややこしいことになったな、ルレイア…」

俺は、ルレイアに向かってそう言った。

「そうですね…」

「新兵器ってのが何なのか知らないが…」

絶対ろくなものではない、ということは確実だろうな。

「…いずれにしても、お前は俺が守るよ」

「おっと、嬉しいことを言ってくれますね、ルルシー姫」

「茶化すなよ」

俺は真面目に言ってるんだぞ。真面目に。

「分かってますって。大丈夫ですよ、ルルシーのことは俺が守ります」

「そうか」

そりゃ頼もしいな。

ルレイアがいれば、どんな新兵器を持ち出されようとも返り討ちに…。

「…リアルBL…。素敵…!」

「…おい、そこの腐男子」

俺とルレイアのやり取りを、目をキラキラさせながら見つめていた。

「どう見たら、これがBLに見えるんだ?」

「大丈夫、大丈夫ですよ。分かってますから」

絶対何も分かってないだろ。

勝手に腐った妄想を拗らせやがって。

「お二人の愛は邪魔させませんよ。新兵器なんか、僕がぶっ潰してあげますから」

余計なお世話だ。畜生。