『青薔薇連合会』への多額の借金のカタに、無理矢理従わされている一般女性。

それだけでも、あまりに気の毒だというのに。

隣に写っているこの男性は、それ以上だというのか?

「この人?この男の人?」

「そうだよ」

私が写真の中を指差すと、セルニアは頷いた。

…こちらも、ぼやけていて表情は読めないが。

どうやら、かなり若い男性だということは分かる。

こんな若い人が、どうして『青薔薇連合会』なんかと…。

…すると。

「…その人なんだよ、ブロテ」

「え…?」

その人、って…?

「『青薔薇連合会』に脅されて、人質にされているベルガモット王家の皇太子」

セルニアがそう言ったとき、私は頭を殴られたようなショックを受けた。

…そんな、まさか。

「ローゼリア様とアルティシア様の弟君らしい。名前はルーチェス殿下と言って…」

「この人が…!あ、いや…この御方が、ベルガモット王家の皇太子…!?」

「あぁ。一般に顔は知られていないから…でも、データベースには載っていた。僕も驚いたよ…」

…この御方が、『青薔薇連合会』に人質に取られた皇太子。

ルーチェス殿下。

「なんと…お労しい。こんなところに連れてこられて…」

あの男。ルレイア・ティシェリーは、どれほど卑劣なのだ。

人質に取ったルーチェス殿下を、小間使いのように自分に従わせ、好き勝手に連れ回すなんて。

命を脅かされているルーチェス殿下には、逆らうという選択肢が取れない。

こうして、ルレイア・ティシェリーに奴隷のように従うしかない。

本来なら、ベルガモット王家の王位を継ぐべき方が…このような憐れな姿に。

王家の威信と権威を何だと思っているのだ。あの卑劣な男は…!

牢獄に閉じ込めている訳じゃないのだから、まだマシだとでも言うつもりか?

…それなら、この写真に写っている人は…。

「…戸籍が見つからなかっただけで、他にもルレイアの周りに写っている人は皆、ルレイアに弱みを握られて、従わせられているんだろうね」

「…僕もそう思う」

このルルシーという人も、他にルレイアの周りに写っている人も。

何らかの理由でルレイアに弱みを握られ、無理矢理言うことを聞かされている。

それで自分は、王様のように侍従を従え、左団扇で満足していると。

本当に…何処まで卑劣なんだ、この男は。

無辜の人々を…そして、ベルガモット王家の皇太子殿下を、まるで自分の奴隷のように…。

「…許せない。私…この人を許せないよ」

「同感だ。絶対に許しちゃいけない…」

「詳しいことを、もっとよく調べよう。二の足を踏んではいられない」

悠長にしている暇はない。今すぐにでも動いて、少しでもたくさん情報を集める。

そして、こうしてルレイアのもとで苦しんでいる人を…少しでも早く、地獄から救ってあげなくては。