それから千珠琉は毎週末お見舞いに行き、恒を元気付けようと声をかけた。そして、毎朝昴と一緒に神社で願い、毎夜星に祈った。
しかし願いも虚しく、恒もいなくなってしまった。
千珠琉にも昴の方が辛いのはわかっていたが、二人目の父のような存在だった恒が亡くなったという出来事は中学生の千珠琉には受け止めきれず、毎日昴に会うたびに泣いてしまった。
「なんで私の願い事って叶わないのかな…」
泣き腫らした千珠琉がぽつりと言った。

それからしばらく後、昴は千珠琉に言った。
「願い事って口に出したら叶わないらしい。この前テレビで言ってた。」
二つの出来事が千珠琉にとっての—もちろん昴にも—トラウマになってしまい、千珠琉は昴の言葉を信じて二度と願い事は口にしないと決めた。その後たまたま見た雑誌の開運特集にも同じことが書いてあったのも千珠琉の信じる気持ちを強くした。
そして今も強く信じているため、千珠琉と昴は初詣などに行ってもお互いの願い事を聞かないのが決まりごとになっている。

昴の父の死が二人を少しだけ大人にし、“すー君”が“昴”になった。
そして昴には千珠琉に言えない後悔が残った。