「…ずっと言おうと思ってたんだ」
昴が続ける。
「本当に叶えたい願いは口に出さなきゃ叶わないって俺は思ってる。」
「でも、ルルは?(ひさし)さんは?」
「……チズもわかってるだろ?どうしようもないこともあるって。」
「………。」
「ルルの時は動物病院の先生だって言ってくれただろ?よく頑張って面倒みたって。拾われて幸せに天国に行けたはずだって。」
たしかに先生はそう言ってくれた。ルルは拾われなければすぐに病気かカラスなどに襲われて死んでしまっていたはずだと。
「父さんも…チズが病室に来て「早く元気になって」って言ってくれるのが嬉しいって言ってたよ。」
「わたし…気つかわせたって…迷惑かけちゃったかと思ってた…恒さんは余命知ってたんでしょ…?」
涙を堪えながら話す千珠琉に、昴は首を振る。
「父さんも朱代さんも、もちろん俺も、そんな風に思ってないよ。チズが毎日のように神社に行ってくれてたのも二人とも知ってた。チズが病室に来てくれた日は父さん楽しそうだった。」
ずっと胸の奥に鍵をかけてしまってあったような気持ちが解き放たれたような感覚だった。