「聞けば良いじゃん。」
月曜、教室で山下(やました) 由梨(ゆり)は千珠琉にあっさりと言ってのけた。
どちらかと言うとふんわりした見た目の千珠琉とは雰囲気の違うクールなクラスメイトだ。
「あーもう!由梨は絶対そう言うと思ったよー!そんな簡単じゃないんだよー!」
「なら私に聞くなよ。」
「うわー由梨っぽい!」
そう言って机に突っ伏す千珠琉の情緒不安定気味な反応に由梨は慣れた様子で呆れている。
「こまちと大河内って付き合ってるようなもんでしょ?なんでも聞けば良いと思うけど。」
由梨の言葉に千珠琉はバッと顔を上げてブンブンと首を横に振る。“こまち”というのは『“こま”や “ち”ずる』を略したあだ名だ。
「それはなんの否定?付き合ってる事?なんでも聞く事?」
「両方!」
由梨の問いに千珠琉ははっきりした声で答えた。
「えーでも一緒に登下校して休みに遊んだりもして、夜中に流れ星も見ちゃうんでしょ?付き合ってるでしょ、それ。」
「…幼馴染だから。兄妹(きょうだい)みたいなもんだよ。」
「ふーん。」
異性の兄妹ってそんなに一緒に過ごすか?と由梨は思ったが、あえて口には出さなかった。
「昴と私が付き合うことは無い気がする…。」
千珠琉はポツリと(こぼ)した。