二度目の好きをもらえますか?

 賢ちゃん、もとい、大谷くんの弾けるような笑みに私は言うまでもなく圧倒されていた。

 それは、愛と勇気だけが友達だと歌ったあのパンのヒーローに似た笑顔じゃなくて、まるで太陽のようだった。

 いつも強気に上がった眉を下げて、クシャッと顔を崩して笑う彼の笑みは、温かくて優しくて、可愛い。

 胸の奥にポッと火が灯ったみたいに温かくなる。嬉しくなる。

「だって、しょうがないじゃん。一般論なんだもん」

 私も彼に釣られて笑っていた。

 今になってようやく気が付いた。

 失恋には新しい恋、だなんてもっともらしく言ったけど。それは麻衣子からの受け売りだ。

 そして私は、私自身の失恋を、まさに賢ちゃんで癒していたんだ。

「そもそも発想がおかしいだろ、少女漫画に感化されすぎじゃねーの?」

「え、どういう意味?」

「そのままの意味。彩月、部屋で少女漫画ばっか読んでるだろ?」

「……は。何で知ってるの?」

「何でって俺の部屋から丸見えだもん。夜で電気も点けてんのに、カーテンぐらい引けよ」

「カーテンじゃないよ、うちは。ロールスクリーン」

「その訂正いらない」

「て言うか、普段から覗いてんじゃないでしょうねー??」

「バカ、自意識過剰。ンなわけないだろ」

 あはは、と笑いながら私はふと真顔になる。