「んだよ、急に大人しくなって。用が済んだんならさっさと帰れば?」
膝上で握りしめた拳から目を上げ、私は目の前の怪我人を睨んだ。
「冷たいよ!」
「おお、なんだよ、急に」
「その塩対応、なんとかなんないの? いい加減ムカつくんだけど!」
私のよく分からない怒りを受けて、大谷くんは呆気に取られ首を捻っている。
口を半開きにして瞬きを繰り返すだけで、何と言ったらいいのか二の句が継げないようだ。そんな彼を無視して私は一つ、柏手を打った。
「よし、決めた!」
「……は?」
「私、もう賢ちゃんには遠慮しない」
「はぁ?」
「賢ちゃんの失恋の傷、私が治してあげる」
「いや、何でそうなんの?」
「だって失恋には新しい恋なんだよ、知ってた?」
「ヒトの話を聞けよ」
「まぁ、賢ちゃんはモテるしさ。きっと選り取り見取りだよ。
自分を好きな子の中から、好きな人が見つかったら凄くない? 無事、ハッピーエンドだよ??」
両手を広げてどうだと言わんばかりに主張すると、彼は目を丸くし、ついにはフッと吹き出した。
「あははははっ! なんでドヤ顔なんだよっ」
「……え? えへっ?」



