二度目の好きをもらえますか?

「うん、この頃バイクで出掛ける日が多かったし、寝不足もあったみたいだから……心配した」

 そろりと彼のベッドに近付き、そばに置いた丸椅子に腰を下ろしても、彼は別段、嫌がる素振りを見せなかった。

「少しだけ、おばさんと話したよ」

「……ああ、さっき聞いた」

「隣りに住んでもう一ヶ月ぐらい経つから今さらなんだけどさ。おばさん、昔から私の名前知ってたんだね?」

 さっきデイルームで話した会話を思い出し、何気なく振ってみた。大谷くんは依然として顔を背けたままで、窓の外を見ている。

「子供の頃、あの子が好きだったさっちゃんよねって訊かれて。なんか、懐かしくなったよ」

「……昔の話だろ」

「うん、そうだけどさ。愛してる、なんて言われたの。後にも先にもあの時だけだよ」

「……っ、あのなぁ」

 そう言ったきり、彼は右手で顔を覆い、ついでに舌打ちをもらした。

「分かってる、小四の話。
 あの頃はさ、毎日けんちゃんに追いかけられて、インク付けて泣かされた事もあったし、昼休みは女子トイレに隠れてた事もあったから、物凄く覚えてるんだよね。
 でも、クラスのみんなが仲良くてさ。男子も女子も私の事をあだ名で呼んでくれてたし……そういうの、今から思うと凄い良いことだったんだなって最近になって思うんだよ」