どこか附に落ちない気持ちを無理やり奥へと押し込め、「彼女か」と呟いてみた。

 賢ちゃん、彼女いるんだ。どんな子なんだろう?

 前の学校の子? もしかして遠距離恋愛、とか……?

 平日の夜八時過ぎにバイクで出て行って、深夜零時を過ぎてから帰って来る。

 寝る間も惜しんで会いに行くなんて、すごい……素敵。

 愛がなきゃ出来ない。

 賢ちゃんの一途さは今も健在ってわけか。

 体を温めてから脱衣所に出ると、私はバスタオルを巻いてからパジャマに着替えた。

 結局その日も十二時を回ってから、バイクの排気音を聞いた。

 教室ではほとんど喋らず、一日おきか二日おきの夜にはバイクを走らせて出掛けて行く、そんな日々が二週間ほど続いた頃。大谷くんが急に学校を休んだ。

 空席になった彼の机を見つめ、ぼんやりと考えていた。

 ゆうべはどうだっただろう?

 バイクは出して無かったように思うけど。私が気づかなかっただけで、彼女の所に行ったのかもしれない。

 彼女に会いに行って、そのまま泊まったのかもしれない。

 何故か胸の奥がザワザワして、嫌な気持ちになった。

「……つき、……彩月…っ?」

「……え、」