自分の私物の一切を、彼の家に置きざりにしたため、私は手ぶらだった。いや、唯一傘は持っていたけれど。
私は賢ちゃんから携帯を借り、自宅の電話番号をプッシュした。
『え、さっちゃん?? 今どこにいるの? お母さんさっきお隣りさんに行ってきたんだけど、二人とも居ないって言われて……』
あわわっ、やっぱり!
「ご、ごめんっ、お母さん! わけあって今、賢ちゃんと駅にいるんだけど。すぐに帰るからっ!」
お母さんは電話口で『駅?!』と頓狂な声を出していた。帰ったら事情を説明するからと伝えて、電話を切った。
結局のところ、持って来た傘に出番はなかった。一時的だろうが、雨のやんだ暗い夜空を見上げて、私はひとつ深呼吸をした。
「ちょっと寒いね」
そう言って賢ちゃんと並んで帰路を辿る。「結局また濡れたもんな」と彼が笑った。
跳ね返りの水でまた靴も濡れたし。私は目を下げて、明日履く靴の事を考える。
「ありがとな、花織のこと」
「え」
賢ちゃんの声で顔を上げる。
「あいつ……。ちょっと病んでてさ、メンヘラってやつ?」
「……」
「常に誰かがそばにいて、構ってやらねぇとおかしくなるんだ」
「……そう、なんだ」
「だからさ。別に俺じゃなくてもいいんだよな」
「え?」
私は賢ちゃんから携帯を借り、自宅の電話番号をプッシュした。
『え、さっちゃん?? 今どこにいるの? お母さんさっきお隣りさんに行ってきたんだけど、二人とも居ないって言われて……』
あわわっ、やっぱり!
「ご、ごめんっ、お母さん! わけあって今、賢ちゃんと駅にいるんだけど。すぐに帰るからっ!」
お母さんは電話口で『駅?!』と頓狂な声を出していた。帰ったら事情を説明するからと伝えて、電話を切った。
結局のところ、持って来た傘に出番はなかった。一時的だろうが、雨のやんだ暗い夜空を見上げて、私はひとつ深呼吸をした。
「ちょっと寒いね」
そう言って賢ちゃんと並んで帰路を辿る。「結局また濡れたもんな」と彼が笑った。
跳ね返りの水でまた靴も濡れたし。私は目を下げて、明日履く靴の事を考える。
「ありがとな、花織のこと」
「え」
賢ちゃんの声で顔を上げる。
「あいつ……。ちょっと病んでてさ、メンヘラってやつ?」
「……」
「常に誰かがそばにいて、構ってやらねぇとおかしくなるんだ」
「……そう、なんだ」
「だからさ。別に俺じゃなくてもいいんだよな」
「え?」



