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花織さんが落ち着くのを待ってから、賢ちゃんが彼女の携帯を借りて電話を掛けていた。彼女の親に事情を説明し、駅まで迎えに来てもらうように頼んでいた。
その間、彼女を一人にはできないので駅員室へと付き添い、そこで待たせてもらえるようにお願いをした。事の次第を説明し、親が迎えに来るのでと話すと、駅員さんは快く承諾してくれた。
「じゃあな、花織」
賢ちゃんの優しい声を聞き、彼女は目を合わせずに頷いた。駅員室の丸椅子に座りながら、視線は手の中のスマホを見ていた。
部屋を出る間際、「ありがとう」と彼女が呟いた。私と賢ちゃんが同時に振り返ると、彼女は依然としてスマホを見たままでポソっと言った。
「来てくれて……嬉しかった」
……あ。
思わず彼の表情を盗み見てしまう。賢ちゃんは花織さんを見て、穏やかに微笑んでいた。
駅員室を出てから急に"親"と思い出した。私は首を振って掛け時計を探した。
っげ! 門限過ぎてる!
長針と短針は六時五十分を指していた。
「け、賢ちゃん、ごめん。スマホちょっと借りても良い?」
「え、ああ……」



