二度目の好きをもらえますか?

「っだって、それは……。賢二がそばにいないから……! あの時は寂しかったからって言ったじゃん! あたし何度も謝ったよね? 馬鹿な事したって、後悔してるって言ったよね??
あたしを“ちゃんと”見てくれるのは賢二しかいないの、だからっ、だからもう一回」

「いい加減にしろよっ!」

 彼の、どうしようもない怒りを受けて、カオリさんの赤い傘が地面に落ちて転がった。

 白く降り注ぐ雨が、彼女を頭から濡らしていく。彼女は足元の傘を拾おうともせず、沈黙を守り俯いていた。

「悪いけど、俺はもう無理だから」

 言いながら賢ちゃんが自分の傘を下げて、彼女の赤い傘を拾った。それをカオリさんの手に無理矢理持たせた。

「……っ、なんで? なんでそんな事言うの?」

 彼女の声は、震えている。泣いているのだと分かり、重苦しい空気に満たされる。

 賢ちゃんは逆さまに置いた傘を拾った。

「もう好きじゃない」

「……ぇ?」

「花織の事、もう何とも思ってない」

「……っ」

「いい加減、俺に寄り掛かるのやめろよ。もう電話もラインもしてくるな!」

 頼むから、と言いたげに、彼の声は心の底から懇願していた。