二度目の好きをもらえますか?

「賢二の家、いま誰もいないよ? さっきお母さんが出掛けたところだから」

「……は?」

「上がってもいいよね。雨が酷くてさ、結構濡れちゃったもん」

 そう言って彼女は賢ちゃんちの門扉に手を掛けた。

「っちょ、待てって!」

 その手を彼が掴み、開けるのを制した。

「この間俺、もう来るなって言ったよな?」

「ふふふっ、そうだっけ〜?」

 左手で赤い傘を持ち、彼女が可愛らしく笑う。

「……。岸はどうしたんだよ」

 賢ちゃんがそう言った途端、彼女の頬が強ばった。無表情のお面を被せたみたいにスッと笑みが消える。

「あたしの事、重いんだって」

「それは……花織が追いかけ過ぎるから」

「“重い同士”、やっぱりあたしには賢二がお似合いだって言われたの!」

 カオリさんは、声を弾ませ、またあどけない笑みを咲かせる。それとは対照的に賢ちゃんの声に再び怒気が宿る。

「……意味わかんね」

「だから〜。ずっと言ってるじゃん、やり(なお)そ、」

「っお前が先に裏切ったんだろ!?」

「……っ」

 初めて聞く怒鳴り声に、カオリさん同様、私の肩もビクッと揺れる。