ランダム⑦
主婦:川上あいの場合



川上さんはすでにブログスタイルのHPをお持ちだったので、そのサイトのトップページを編集し、”最新版!世にも奇怪な死に顔現象の情報募集中…”って切り口で、早速発信に着手されたそうです。


「そしたら、1週間で”最初”がきたの。問い合わせフォームで、まさにあの現象ドンピシャの女子大生だった。以後、メールでいろいろやり取りして、そのあと電話しあって、3か月後には会って直に話したわ。今日みたいに」


”1週間…⁇、そんなもんで来るものなのか…⁉同様の現象を持ってる人が…”


単純に私はそんな思いに駆られました。


***


「…その彼女、私のサイトに出会わなかったら、もしかして自殺もあり得たかもしれないって…、涙を浮かべてた。私はこの時、気づいたの。この現象を持っている人って、今もまだまだ大勢いるって。そして皆、日々一人で悩み苦しんでいると。もしかしたら、すでにこの現象に耐えきれず、自ら命を断った人だって…。そう思うと、私は使命感みたいなものをね…。そうして、今現在に辿りついたっってことなんですよ、川口さん」


「わかりました!私も自分の方から発信していきます。でも私はHP持ってる訳でもないので、いろいろ教えて下さい!」


川上さんはにっこりと、何ともな笑顔で答え返してくれてました。
それは何とも頼もしいニコリでした。


***


それから約1か月後…、私のブログはアップし、公開に漕ぎ着けました。


メインコンテンツは、まさに”あの顔”を瞼の下に宿してしまった人達への情報提供、さらに情報募集…。
ズバリ、これに特化したのです。


もっとも、全然枠外の人達からしたら、怪しいトンデモ系に映ったかもしれませんが(苦笑)。


さらに、Hさんのコメントや定期報告なども盛り込んで、なにしろ、あの恐ろしい顔に日々苛まれているであろう人達に向けて、この現象は自分一人じゃないんだということを知ってもらう場としたかったのです。


かくして、私の発信はスタートしたのです。


***


アクセスはアップ早々から予想以上でした。
そして2週間後には、最初のメール反響が届いたのです。

以降、おおむね月数件のペースで新規の問い合わせが寄せられてくる状態が続くわけです。
もちろん、そのすべてがあの現象の所持者ではありませんし、中には全くこのサイトとは関係のない、からかいや悪意を孕んだメールも含まれていましたが…。


それでも、初回メールを送信してくれたOLの方をはじめ、こんな私でも川上さんのように、悩み苦しむ人達を何人もその孤独感から救うことができるなんて…。
それは、どこか新鮮な驚きでした…。


かくして…、川上さんと出会えたことで、私のあの恐怖との対峙は、大きなターニングポイントを迎えたのでした…。




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ー完ー