死グナル/連作ＳＦホラー

閉じれない瞼④
農協職員：川口菜々の場合



「…私としても、いろいろ調べたり、仕事仲間に意見を聞いたりしてみたわ。まずね、どうやらこういった事例、他にもあるようね。それと、その相談者の検認もみたんだけど…。悪い霊に取り憑かれてるとかって感じはなかったわ」


「そうなると…、その人や私なんかは何故…」


「私なんかに言えるのは、内面的な精神作用、脳作用がまず死というものへの恐怖心と連動してる状態が前提になってると思う。それとは別に、他の不特定多数の人が、死というより、死んだ後の怖れや不安に駆られる超常作用を引き起こしてしまう現象ね。これは、本人の意識しないところでってところが、ポイントになるわ」


Ｈさんの分析というかこの説明は、その場でもわりとスンナリ自分でなりにイメージすることができたのです。
何しろ、受け手と発信側を明確に分けての視点に、説得力を感じました。



＊＊＊



「…乱暴に言っちゃえば、死後の自分を生きてる自分がこの世に呼びこんで、その辺に漂わせてる…。この仮定で、別の感覚回路から死への対峙を強めてるあなたとかが、ある瞬間、波動が通って脳内に入ったする。そのことで、ある一定の精神状態になると、その像を脳が映し出してしまうと…。私は先の相談者との面談で、トータルにはそう言う判断に行きついていたの」


「ちょっと待ってください！…それなら私の場合、あの死後の女は瞳に映し出されるたびに出入りするのではなく、最初に入りこんで”そのまま居続けてる”ってことになるんですか。私の脳の中にずっと‥」


「ええ‥。今のところ、私の導いた仮説ではね」


私は愕然となりました…。
あのおぞましい顔を持った、この世のものではない”アレ”は、あの時以来、片時もいとわず今も私の脳の中に居る…。


そう想像するだけで、全身の血の気が引く思いでした…。