「で、どうやって養護テントまで行ったんですか?楓織さん。」


「うー、言わなきゃ、ダメ?」


「可愛い顔しても駄目。こっちはずっとそれが気になってるんだから。」


可愛い顔した覚えはないんだけど…


「うー、碧依くんに…」


「何をモゴモゴ言ってるの?はっきり答えなさい。」


「翔央ちゃん、拷問みたい…」


「いいから早く!」


「碧依くんにお姫様抱っこされました。」


……………


謎の空白の時間が30秒ほど続き


「は?え?」


「翔央ちゃん反応遅い…」


聞いてなかったのかと思ったじゃん。でも仏像みたいにカチーンって固まってたからそのままそっとしといたよ。


「は?え?え?あの如月に?あの今まで触れたくても髪の毛しか触れる度胸がなかった奴が?」


「?触れたかったの?」


「あーいや、こっちの話。へー、なぁるほどぉ。だから言うの渋ってたのね。」


「だって恥ずかしいじゃん…」


あー言っちゃったよぉ〜


「ふーん、結構グイグイ行くつもりなんだねぇ。じゃあ、楓織は?」


「へ?」


なんで私に回ってきたんだ?


「いや、だって如月がグイグイくるんだったら、楓織もいかないのかなぁって。」


「何のために?」


「あー、如月の気持ちに気づいてない感じか〜。」


翔央ちゃんは謎にボソボソと独り言を言い、少しの間考えていた。


「まぁ、邪魔しない程度に私の昔話でも聞いてもらおうかな。この年の子たちって色恋沙汰好きでしょ。」


「皆んなが皆んなそうかは知らないけど…私はそれなりに好きだよ?」


なんか急に話変わったし。でも、友だちと恋バナなんて今までしたことなかったから嬉しいな。いや、でも私は話さないからただ聞くだけか。


でも、友だちの恋バナ聞くのも初めてだからな〜。少女漫画とか恋愛小説好きの私としてはリアルの恋がどんなものなのか、知れる貴重な機会。


今まで私には好きな人ができなかったからなぁ。翔央ちゃんの話聞いて、少し興味もってみようかな。


紙面上とか2次元の恋しか興味なかったからなぁ。ここらで自分事として考えるのもまた一興。


そんな軽い気持ちで聞き始めた翔央ちゃんの恋バナは、想像を絶するほどのものだった。