中間考査の次の週の月曜日。


今日から2日間は試験が返される。


俺は、楓織に負けないために必死で勉強したが、楓織の前ではしたくなかったから家で夜中にやっていた。


それでも、楓織に負けている気がしなくもない。


本当に楓織が天才だということが、桧山の勉強会とかいうもので発覚した。


あの模擬試験はヤバい。桧山が『できた』とか抜かしてるが、それは試験の問題が楓織の模擬試験と同じ種類のものしか出ていなかったからだ。


正直、当てようと思って作った訳ではないだろう。


でも、それらを全て当ててしまうということは、本質がわかっているということだ。


やっぱ、楓織には勝てねーなと思い知らされた。


でも、いつか絶対覆してやると、さらに心に火が点いた。


朝の時間に桧山が『試験の結果は、最後に総合の順位の紙が出てから見せ合おうよ!』と言ったせいで、今日は楓織たちの点数は聞けない。


まぁ、でもそっちの方がワクワク感はあるか。楓織の表情とか見てなんかわかったらいいしな。


いや、それ以前に楓織の顔見てると、俺の感情が高まるからそれどころじゃなくなるな。


ま、いいか。今日も今日とて観察しよう。


これは一切ストーカーとかではない。ただ、楓織に変な虫が寄ってこないように観察してるだけだ。


俺はストーカーじゃない、俺はストーカーじゃない、俺はストーカーじゃない…




そんな中、2日目の試験返しも終わって、総合の順位の紙が出された。


ここの学校は、全体順位が張り出される訳ではなく1人1人個人的に紙で渡される。


そこに全体順位、クラス順位、それぞれの点数とその順位やその平均、偏差値などが書かれている。


俺はその中で…


2位だった。


全体順位もクラス順位も2位。


ということは、俺のクラスの1位が全体順位でも1位ということが確定した。


楓織か…


まだ決まった訳じゃないが、そう確信する。


そして終礼が終わり、桧山がこちらに駆け寄ってくる。勿論行く先は楓織のところ。


「楓織〜、順位どうだった⁉︎私はクラス順位も学年順位も4位だった!」


「凄いね!翔央ちゃん、いっぱい頑張ったもんね!私は…言ったら引かれるからな…」


「引かれるって、気にしないでいいだろ?因みに俺はクラス順位も学年順位も2位だったぞ。」


「うぇ、1位負けた。俺も両方3位。碧依が2位って事はもしかして、白鳥が…」


「はい、私が両方1位です。」


だろうな。


「「「うん、知ってた。」」」


桧山も実琉も考えは同じだった。綺麗にハモったな。


「え〜!?何でわかったの⁉︎」


「だって楓織、天才だから。私が4位取れたのもあの楓織が作ってくれた模擬試験のお陰だよ。」


「そうそう、ひーちゃんの危機を救ってくれて有難う。」


「いえいえ、どういたしまして。私も楽しかったしよかったよ。」


やっぱり楓織はいい子だな。もっと惚れるわ。


「というか、楓織は何点取ったの?俺は相変わらず国語Aと国語Bで1点ずつ落としたけど。」


「碧依は文系苦手だもんなー。天才だから大丈夫とか言ってたくせに。」


「五月蝿い、誰にでも苦手はあるだろ。」


マジで実琉要らないこと言わなくていいんだよなぁ。


「えっと、私は…全部満点だったよ。」


「「「はぁ!?」」」


これには俺もびっくり。皆んな、空いた口が塞がらない。


「えっ、楓織、マジで言ってる?如月でさえ、満点取れてないんだよ?」


「う、うん、翔央ちゃん、本当だよ。」


あ、ヤバいかも。俺ら結構大きい声で話してたから周りのクラスメイトも聞いてるわ。


まぁ、気になるよな。人の順位。そんな中、俺ら4人でクラス順位じゃ飽き足らず、全体順位まで独占してるからさらに目立つな。


あー、明日視線が痛くなること間違いなしだな。先が思いやられる。先って、明日か。


「ちょっと、周りの奴らに聞かれてるぞ。外で話さねぇ?」


「あ、そ、そうだね。是非そうしよう。」


こうして、俺らは一緒に帰りながら楓織に質問攻めしたのだった。