他の人より数倍質素な服を着ていたけど、彼女の輝きは隠しきれていなかった。

 少しだけ痛んでいる、でも綺麗な黒髪。

 澄んでいる桃色の瞳に、整いすぎている顔。

 だけど本当にそれだけしか思っていなくて、彼女と関わるつもりなんてなかった。

 どっちかというと、人がいたのかと残念な気持ちが大きかったと思う。

 それ、なのに……。

『あ、あの……私がここにいるの、誰にも言わないでください……。』

 どういう意味……?

 その場から立ち去ろうとした時、彼女が俺の瞳を見据えながらそう言ってきた。

 訳が分からず、思わず彼女に尋ねてしまった。

『それはどういう事?』

 その言葉から、俺と彼女に関係性が生まれた。



 今思えば、あの時から彼女……桜華のことを好いていたんだろう。

 今まで人に執着してこなかったから、そう気付くのには早かった。

 だけど……俺は一度、桜華を失っている。

 だから現世でも出会えたら、一生離さないと決めていた。

 それにはまず、桜華を見つけなければいけない。