痛い頭の中に、もやのように何かが浮かんできた。

 それはどこかの湖のようで、二人の男女が会話をしている。

 一人は雅君に似ている誰かで、もう一人は……。

『俺は埜雅。君の名は?』

『私ですか?私は桜華って言うんですっ。』

 ……私?

 桜華、と名乗った彼女は私と瓜二つの容姿をしていた。

 少し痛んでいる真っ黒の髪に、桃色の瞳。

 私とそう変わらない背丈で、声だってほとんど同じだった。

 え……?

 夢の中なのかは分からないけれど、それにしてはやけにリアルすぎる。

 どこかで体験したような、そんな感じがして仕方がない。

 混乱している頭で、引き続きその映像を流し見る。

『どうしてこの湖にいるの?それにどうして、誰にも言わないでって言ったの?』

『それは……あんまり家族に心配かけたくないから、です。息抜きでここにいるんですけど、私の両親心配性で……。埜雅さんはどうして、ここにいらっしゃったんですか?』

『俺も息抜きって感じ。初めて来た場所だけど、ここって凄くいい場所だね。』