そんな不器用な彼女の優しさが伝わってきたような感覚になり、ふっと頬を綻ばせる。

 ……俺は、やっぱり大層な人間じゃないや。

 地位を持ってるだけで凄い人だって言われてきたけど、そんなわけない。

 周りの人からの言葉で気付かされてばかりの、まだまだ未熟な子供。

 それでももう……咲桜に嫌われない為に。

 咲桜に好きになってもらえるように、まっすぐに向き合わないと。

 俺は咲桜が好き。他でもない、桜華でもない咲桜が。

 それを伝えようと、俺は急いで教室を飛び出した。

 長引くと、それこそ良くない。

 今すぐにでも伝えようと、咲桜を追い求めて走る。

 ……それ、なのに。

 ――咲桜は、どこまでもお人好しすぎる人だって気付かされる出来事が迫っていた。