『私の前世の人が好きだから、仲良くしてくれたんですか?』

『私には、前世の記憶なんてないです。雅君は、何を根拠に好きだって言ってるんですか……?』

『私は、雅君が好きな前世の人にはなれませんっ……!もう、私に関わらないで、ください……。』

 さっきの咲桜の言葉を思い出して、無意識に息を吐きだす。

 そしてようやく……自分の愚かさに気付いた。

 俺は桜華の面影ばかりを、無意識に追っていたんだ。

 “咲桜”自身を、見ようとしていなかったんだ。

 はっきり告げられた気がして、止まらないため息に呆れる。

 だけど……言い訳になるかもしれないけど、これだけは言いたかった。

 ――俺は桜華だから好きになったんじゃない。君自身に惚れたんだ。

 そう言いたくて声を発したけど、それさえも制されてしまった。

 聞く耳を持とうとしてくれない彼女に何を想っても、多分もうダメだ。

 前世の記憶はないってはっきり言われたし、この際どうすれば……。

「やぁ、暁槻君?」

「……右京さん、じゃないですか。」