私の腕を無言で掴んだまま、淡々と歩く雅君。

 その後ろ姿に、いつになく不信感を覚えた。

 さっきまでの安心感はどこかに消え去り、警戒心を高める。

 安心できるって思ってたのに、何でこんなすぐに気持ちって変わるの……。

 残酷だな……なんて、他人事のように思う。

 ぼんやりとしている頭のまま、連れてこられたのは空き教室だ。

 今は使われていない授業準備室で、無駄に夕日が差し込んでいる。

 中に入って扉を閉めた雅君は、私の腕を掴んだまま壁に追いやった。

 ジンジンと痛む腕からは、雅君の気持ちは測れない。

 私はエスパーじゃないし、人の心を読めるくらい凄い人じゃない。

 そんな私でも……今の雅君の気持ちを察する事は、大いにできた。

 ……怒って、る。

 何で雅君が怒っているのか、理由までは読めないけれど……いつになく怒り心頭の彼に、一抹の不安を覚える。

 こんな顔してる雅君、初めて見た……。

 いつも穏やかな彼からは想像がつかないくらい豹変していて、私にはどうする事もできない。