「え?」

 わがまま……?

 意味が分からずに視線を暁槻君に戻すと、いつもとは違う瞳と合った。

 熱っぽいような瞳で、思考が停止しかける。

 暁槻君は、何を言ってくるんだろう……。

 全くと言っていいほど憶測も思いつかず、静かに待つ。

「俺のことも……名前で呼んでほしいな。」

「…………へっ?」

 しっかり身構えて何を言われても大丈夫なようにしていた私に届いたのは、そんな言葉。

 も、もしかしなくても……それがわがままだったり、するのかな?

 だとしても、どうしてここまで溜めたのか純粋に気になる。

 だけれど拒否する理由もないから、私は大きく首を縦に振った。

「それなら……雅君って呼んで、いいですか?」

「うん、ありがとう。じゃあ俺も、咲桜って……呼んでいいかな?」

 ……っ。

 咲桜……と言われたと同時に、体中に熱がこもるのが分かった。

 あかつ……雅君の口から私の名前が紡がれているという事実に、何故かこれ以上なく嬉しく思う。

 ど、どうして私は嬉しくなって……っ。