私は、決意を込めて、どこか緊張感のない声音の、封印の箱、シストを見つめる。
『……いいよ? それなら助けてあげる。その代わり、このあと、すご~く大変だと思うけど、がんばってくれるよね?』
ぴょこんと、プレゼントの箱の三角形にとがったリボンが、白いフワフワの耳に変わる。後ろ側からしっぽが現れて、箱はあっという間に、空に浮かぶ小さな二足歩行の猫に変わった。
もう一度、現れた魔法陣は、今度は桃色の光を強めて、私たちを包み込む。
そのまま、私はぼんやりと、自分の目の前に表示されたステータスの『聖女』という文字が、桃色の光の中で、猫の爪にがりがりと削られて消されていくのを見た。
聖女の文字が消えると、何もなかった空間から赤いリボンがフワフワと現れて、くるくると私とレナルド様の小指に絡みついた。
運命の赤い糸みたい……。
『聖女の名の代わりに、君の名前を返そう。がんばってね? 理沙』
私が意識を保っていられたのは、残念ながらそこまでだった。