「先輩,ごめんなさい。俺は先輩の事が,今でも好きです。先輩に迷惑かけず,先輩のそばにいたくて……嘘をつきました」



先輩の瞳が小さく見開かれる。

たっぷりと間を置いて,俺が飲みなれた珈琲に口をつけていると



「私達はもう,友人,だと思う」

「……はい? ありがとう,ございます……?」



先輩の,友人。

ふにゃりと顔が崩れる響き。

けれど,先輩の言いたいことはそれだけではなくて。



「だから,いづみでいい。思い返せば,私も君をたまに薫と呼び捨てにしている」

「…………」

「長いな」

「……すみません,いづみ……さん」



ああ,こんなことがあっていいんだろうか。

これからもいづみさんなんて呼んで,友人だからとそばに置いて貰える。

いづみさん,俺。

本当に貴女が好きです。