オタクな俺とリアルな彼女。

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俺が過ごしたのは



『あ~くそ』



当落にドギマギして先輩とまともに話せない。

そんな数日だった。

拳を握って,腹筋に力をいれて,俺は勇気を振り絞る。



「企画……いくら,したんですか?」

「いくら? …あぁ,製作·梱包·発送全て含めると,大体35万前後になる見積もりだ」

「さっ」



俺の軽はずみな言動で,35万が動く?!

普通なら,そんな直ぐに貯まる金額じゃない。



「余計な気を揉むな。言っただろう,『愉快だ』,と。私が決めた,君は関係ない。それに,たかが1年とは言えコアなファンがいてな。その還元も含めているし,まだ配信で得た金は余裕で余っている」

『なかなか愉快なものだな』



浮かんだのは,ネットが荒れたあの日,先輩が向けた楽しそうな顔。

リスナーが自分と目が合ったような錯覚をするような……

気を抜いた無邪気な顔。



「やっぱあれ…! お…」



や,違う。

思い上がるな俺。

先輩はリスナー全体に,もしくは思わず溢したに過ぎない。

配信を見ていると知っているから,先輩は今それを持ち出しただけなのだ。



「……何を百面相している,君に向けたに決まっているだろう。他に誰がいる。大体,そんな一言,配信として話したのであれば,まず憶えてるとは思わない。まさか,相手が受け取ってないとは思わなかったがな」