オタクな俺とリアルな彼女。

「だからっ」

「…君の気持ちは分かった。検討しておこう」

「ほっ」



ほんとですか?!!

どんな方法を取るのかは分からない。

もしも抽選ならば,当たるかも分からない。

けれどグッズが存在する。

それだけでオタクは夢を描ける。

ハズレても,その悲しみを糧に次こそと言う無謀で儚い夢を描けるのだ。



「先輩,イラスト描けたんですね……しかもこんな短時間でこのクオリティー……」

「これを描ける,と言うのかは分からないが,確かにこの程度なら容易く描ける。だが,漫画のようなガッツリした絵を描けと言われれば,私にはこのミニキャラ程度にしか描くことは出来ない」

「十分じゃないですか。絵と一括りに言っても,ジャンルはあります。先輩の絵柄は先輩にしか無いもので,すごく良いと思います」

「……そうか」

「あ,先輩照れてます?」

「照れてなどいない」



力の入った右手を見て問えば,先輩はむっとした表情をする。

無防備なその表情は,ただひたすらに可愛かった。

グッズ,実現すればいいなぁ。

販売なら,先着だろうと確実に手にはいる。

いくらになるんだろう。

想像するだけでも楽しみだ。

そうわくわくとにやついていた俺は,翌日の配信で目を剥くことになる。

先輩の,いや氷室奏の行動力は半端じゃなかった。