オタクな俺とリアルな彼女。

「お酒……みたいなデザインの缶に,先輩のイラスト,とか。メガネとかの特徴とか。そう言ったイラストがプリントされたキーホルダーやTシャツがあると……嬉しい,です」



イラストは有償依頼等も出来ますし……

語尾が縮こまりながら,なんとか最後まで話し切る。

先輩は間接を曲げた人差し指を下唇に当て,深く考え込んだあと



「なるほど」



と1人頷く。

な,なにが。

そう狼狽えると,先輩はレザーバックから髪とペンを取り出して何かを書き始めた。

書いているのではなく,描いているのだと俺が気付いたのは,それから少ししてからだった。

感激で,わっと声が出ていく。

それは,今まで思い描いてきた空想グッズのイラストそのものだった。

俺が言った通りの構図で,2パターンもある。

ピンクと緑でデザインされた缶の左下に,被さるように先輩のミニキャラが斜めにポーズを取ったもの。

そして,ショルダーバックのように,缶にメガネを引っ掛けたもの。

どちらもオシャレで最高だった。

欲しい。

その欲が最大まで昂って



「今は手持ちがない。ボールペンではここまでしか描けないが…」

「最っ高です! 公式で出してくれたら,絶対買います! 俺だけじゃなくて,絶対!」



俺に目を向けた先輩の言葉を遮って,声をあげてしまった。

若干身を引いて,先輩が驚く。

俺はそれでも引く気は無かった。