オタクな俺とリアルな彼女。

それから何日か,同じような日が続く。

いつしか『図々しい男』と変わり,もう周りの人間は気にならなくなった。

休日は先輩に会えない悲しみで,夜が待ち遠しい。

贅沢だなと俺は俺に呆れた。

そんなある日の夜。

先輩の配信が始まって,俺はその日もその日とて聞き専に徹していた。



『リスナーとの恋愛はアリですか,か』



どきりとした。

大切な回答のチャンスをそんなことに使うなと質問者に怒りがわく。

俺もフラれているとは言え,そんなこと聞きたい人間はいないだろう。

先輩から目が離せない。

酒を口に含んで,先輩がカメラを流し見る。



『何故ありだと思っているのか甚だ疑問だが,時折このような質問がくると言うことは需要がある内容なのだろう。そろそろ見かけるのも面倒であるから,はっきりと断言しておく。私は私のリスナーと恋愛するつもりは一切ない。よって,なしだ』



はぁぁぁぁぁ。

一気に脱力する。

だよなぁ。

俺は先輩の配信が好きだ。

俺は同じ大学だと知った今でも,その事実を変えたいとは思えない。

その時点でもう,俺にはチャンスなんか無いんだろうなと,ほんの少し残っていたらしい諦めの悪い男心が泣いた。