それから俺は,反論の拒否とさっさと戻れと言う意思を瞳から受け取り,次の講義へと向かった。

講義中も久々に寝サボりをし,帰った後も寝るために出来ることは全てした。

そしていつも通り,夜には先輩の配信が始まる。



『あーんーあー』



歯切れの悪い始まり方だった。

視線が明後日の方へ飛び散らかし,ゲーミングチェアの上で,足はもぞもぞと動く。

俺を含め,不思議に思うリスナー達。

結婚でも決まったのかと言ったコメントも見られた。

それを受け,先輩がはぁと頭痛がするような仕草でため息を吐く。



『……すまない,リアルでちょっとな。気にするな。乾杯』



リアルで,ちょっと。

……身バレ。

俺は驚いて,ベッドから転げ落ちそうになった。

あまり気にしていなさそうだったのに,俺が見ているかもしれないと,先輩は動揺していたのだ。

その後は心配コメが続き,それが落ち着くといつも通りだった。

先輩も淡々と答えていく。

それも終わったら,俺は先輩の今後の活動を賭けて,気合いで眠った。

そして今朝,ぐっすり眠りすぎて危うく遅刻をするところであったのはご愛嬌だ。

あ……いた。

俺は昨日と同じ場所に,先輩を見つける。

今日の昼も,昨日とメニューに違いが無いように見えた。

本を片手に持っている。