だが、そう約束した日から美子に会う日は二度と来なかった。
僕は何度も、何度も美子との待ち合わせ場所 ”東京タワー”に足を運んだ。


東京に桜の花が咲くころ、俺は卒業の日を迎えた。
美子の事がずっと忘れられなかった。会えなくなるのら、もっとずっと前に俺の気持ちをしっかり伝えるべきじゃなかったのか?!後悔ばかりの日々だった。
友人から美子の自宅の場所を聞いて、とにかく彼女に会いたい気持ちで向かった。
大きな門から左右を見れば、高い塀が道路の交差点までずっと続いている。中が窺い知れない。

黒塗りの車に乗り込む白無垢姿の女性が門の外から見えた。
その場に立ちつくす俺が見たものは、後部座席に座る美子の姿だった。
偶然にも、その日は彼女の結婚式の日だったのだ。

もしかしたら、彼女は俺に自分が結婚が真近だった事を伝えようとしたのか? いや、違うだろ。言葉にはしなかったが、お互いに気持ちは同じはずだった?
自分に深く問いかけると、疑心暗鬼に駆られてしまう。

何もかもが、どうでもいい状態になり、すべてが遅すぎたのだと悔やむ。
例え、今彼女が目の前に現れても、あの日伝えたかった言葉を今更言って何になる。
こうして、僕の東京での日が終わりを迎えた。


僕は医師の資格を持って、決まりかけていた大病院の就職も断り福岡に戻った。いや、逃げ出してきたのだろう。
地元の病院で、何も思わず、何も考えず、、そして人を愛さず
そうやって時は過ぎてしまうのだと、そう思っていた。