再び触れたその温もりに、桜士の胸が優しく音を立てていく。潜入捜査官であり、日本を守る公安警察だというのに、警戒よりも先に温かな気持ちが心を満たしてしまうのだ。

(アイツらに顔向けできないな……)

公安の部下たちの顔を思い浮かべながら、桜士は笑う。その心には自覚し始めた恋があった。



ファミレスは平日のためか、席が所々空いていた。窓際の席に座ることを決めると、ナタリアがメニュー表をめくり始める。

「どれもすごくおいしそう……!日本の食べ物はおいしいものが多いから大好き!モニカ、何にする?」

「えっと……芋が入っている料理がいいな」

チラリと桜士が隣を見ると、一花がアルオチから回されたメニュー表をジッと見ているところだった。その真剣な表情は、怪我の手当てをしたり、手術をしているような目だ。手当てをしてもらった時のことを思い出し、桜士はそっと包帯が巻かれた場所に触れる。頰が赤く染まった。

(ああ、やっぱり好きだな……)