姫香が驚いた様子で彼に駆け寄る。尚は指にクルクルと髪を巻き付けながら、顔を少し赤くして言う。

「……姫香ちゃん、無事でよかった。急にアナフィラキシーショックを起こしたから心配で、気が付いたらここに来ちゃった」

「わざわざ来てくれたの?ありがとう!」

姫香は嬉しそうに笑う。そして、養護の先生と二人は桜士たちに頭を下げて帰って行った。

「ああいうの、青春って言うのかな?」

「学生の頃が懐かしくなるな、一花!」

一花とヨハンが微笑みながら言う。だが、今回もアナフィラキシーショックが何故起きたのかわからなかった。

「原因は何なんだ?」

桜士の問いに、誰も答えることはできなかった。



だが、それから二週間も経たないうちに姫香は何度も榎本総合病院にアナフィラキシーショックを起こして搬送されることになった。いつも原因はわからずじまいである。

「今のところ共通しているのは、アレルゲンとなるナッツを一緒にいた山川尚くんが食べていたってだけか」

桜士がそう言うと、ヨハンが頭を掻きむしりながら「ああ〜、もうわかんねぇ!!」と大声を出す。

「姫香に何が起きているんだ……」

ため息を庄司が吐いた時、一花がテーブルを両手で叩いて立ち上がり、言った。

「潜入調査をしましょう!!」

その言葉に、ヨハンや庄司はもちろん、桜士の目も点になった。