「まずは、事件を解決してくれてありがとう」

「いえ。犯人を逮捕できてよかったです」

安藤警視正はニコニコと笑い、桜士も形だけの笑みを浮かべる。あの時のように嫌な予感がしたのだ。

「これ、見てくれるかな?」

安藤警視正に手渡されたのは、榎本総合病院のレビューだった。ここ最近で多くのレビューが書かれている。

『救急車で搬送されました。本田凌先生がイケメンだったから、辛い検査も耐えられた笑』

『丁寧で、優しくて、本田先生最高です!!』

『こんなにいい先生、今まで見たことがない!ありがとう、本田先生!』

仮初の姿である本田凌のことばかりがレビューに書かれている。安藤警視正はニコニコしながら言った。

「思ったより人気が出ちゃったねぇ……。事件解決したらもう潜入する必要ないんだけど、すぐに消えるのはまずいから、もうしばらく潜入しててくれない?」

「は、はい……」

やはり面倒なことだった。桜士は部屋から出るとため息を吐く。だが、心の片隅では一花の働く病院でまだ働けることを喜んでいる自分がいる。

「恋って偉大だな……」

桜士は顔を赤らめ、ポツリと呟いた。