透明を編む 【完結】

仲直り、というかお互いが自分達の気持ちを伝えた後、教えてくれた事が一つあって、千冬はやはりわたしの為に手話を覚えていてくれた様だった。
だけどわたしと距離を置いていた三年間は手話を覚えようとするのをやめていたらしい。
もうわたしと関わる事すら

それでもこれからはわたしの為にまた、手話の勉強をすると言ってくれた。

まだほんの少しの単語しか使えないから、と千冬は言っていたけれどその気持ちだけで嬉しかった。


六花と話が出来る手段を、気持ちを伝えられる手段を出来る限り持っていたい。


千冬が言ってくれたその言葉は、わたしの中で宝物となった。


そして一つ、気付いた事がある。

千冬は言葉に出して伝える事が照れくさい時、こうして手話を使うという事。


人はよく言葉にして伝えてくれないとわからないと言うけれど、わたしは音を失った代わりに言葉以外で千冬の想いを受け取れる方法を持っている。

音として届いてくれる事はないけれど、カタチとして届いてくれる。


わたしにとって言葉は透明だ。

わたしにだけ透明で届くその言葉。

本音を言ってしまえば千冬の声でその言葉を聞いてみたい。だけどわたしにだけ音を失って届くその透明な言葉は宝物もので。


カタチとしても伝え合える。

透明だけど届いている。


それはとても幸せな事なのだと、そう思える。