気持ちが沈んでいても、どんなに憂鬱な夜を過ごそうとも朝はやってくる。

いつまでも学校を休んでいるわけにもいかず、お母さん達に心配をかけるわけにもいかず、わたしは思い足取りで家の玄関を出た。


一週間以上ぶりの学校は、とても色褪せて見える。

誰の声も何の音も聞こえなくて、その上千冬とあんな感じになってしまって気持ちが落ち込んでいるせいで音だけじゃなく視界までまるで色を失った様に思えた。


教室に入っても誰も声を掛けてくれない。

一週間わたしが学校を休んでいた事すら半数以上の人が知らないかもしれない。

友達を作る努力も、勇気も出さなかった自分が悪いのだと分かっていても頭の中には優愛の笑った顔が浮かんできてつい、甘えてしまう。


着席して右側に千冬がいない事にとてつもなく寂しさを覚えて、だけどどこかホッとしている自分もいた。

どんな顔で会えばいいのか分からない。

あそこまで拒絶されて、それでも今までの様に昔みたいに戻りたいって追いかけられる程わたしは強くない。


だけどやっぱり、ずっとずっと好きだったから。

誰よりも傍にいて、事故の後わたしに立ち上がる理由をくれた人だから、このままっていうのも嫌で。


透明の膜をわたしの周りにだけ張られたみたいに、孤独を感じた。


誰とも分かり合えず、友達もいなくて、自分から話しかける勇気もなく、千冬にまで忘れたいと言われたわたしはまるで透明人間の様だと自嘲せざるを得ない程に、自分自身の存在がどうでもいものなのだと思い知った。