「ち、千冬っ⋯!」
「千冬っ⋯!」
「千冬ってばっ!!」
それから千冬は暫く無言で歩き続けて、手は繋がれたままで、どうすればいいのか分からなくなったわたしは人通りの少なくなった線路沿いの道路に入ったところで千冬に声をかけた。
けれどわたしの声を無視して更に進もうとする千冬の手をわたしも強く握り返して、ピタリと足を止めればグッと一瞬突っかかった千冬が鬱陶しそうにやっと足を止めてくれた。
「(なんだよ)」
「なんだよ、じゃなくて⋯」
数歩先で足を止めた千冬とわたしの間には僅かながら距離があって、繋いだ手はどちらからともなく、ゆっくりと離れた。
それがやけに寂しく思えて、街灯のあかりが夜だというのにわたし達の影を作った。
頭上にはさっきまで星が瞬いていたはずなのに、今はもう見えない。
灰色の雲に重なった月がまるでこれから起こる事を予期しているかの様に鈍く光を失っていた。
「千冬っ⋯!」
「千冬ってばっ!!」
それから千冬は暫く無言で歩き続けて、手は繋がれたままで、どうすればいいのか分からなくなったわたしは人通りの少なくなった線路沿いの道路に入ったところで千冬に声をかけた。
けれどわたしの声を無視して更に進もうとする千冬の手をわたしも強く握り返して、ピタリと足を止めればグッと一瞬突っかかった千冬が鬱陶しそうにやっと足を止めてくれた。
「(なんだよ)」
「なんだよ、じゃなくて⋯」
数歩先で足を止めた千冬とわたしの間には僅かながら距離があって、繋いだ手はどちらからともなく、ゆっくりと離れた。
それがやけに寂しく思えて、街灯のあかりが夜だというのにわたし達の影を作った。
頭上にはさっきまで星が瞬いていたはずなのに、今はもう見えない。
灰色の雲に重なった月がまるでこれから起こる事を予期しているかの様に鈍く光を失っていた。



