嬉しくて微笑むわたしを見て雪乃ちゃんも微笑み返してくれる。
でも直後に僅かに寂しそうに息を吐いて。
「(わたしね、女の子も欲しかったの)」
「⋯そうだったんですか?」
「(うん。もちろん千冬は宝物だし、千冬がお腹の中にいる時も産まれてきてくれた時もすっごく嬉しかったし、今だって愛してるけど、男の子も女の子も欲しかったなって思う)」
「⋯⋯」
「(出来なかったとかじゃなくてたまたまタイミング的に二人目を作らなかったんだけど、六花ちゃん見ると女の子も欲しいなって思うの。一緒にお買い物したり恋バナしたり、お料理したり⋯、そういうのが憧れで)」
「ふふ、楽しそう」
「(でしょ?六花ちゃんはお母さんとそういう事しないの?)」
「たまに。この前は一緒に洋服を選んでもらったり⋯」
「(やっぱ女の子っていいなぁ。うちの息子はもう最近反抗期で)」
「反抗期⋯」
困った様に笑う雪乃ちゃんは吹いた風に靡いた髪の毛を耳に掛けながらゆっくり頷いた。
「(元から素直な子じゃなかったけど最近更に千鶴さん⋯、お父さんに似てきて何考えてるのか分からなくなってね)」
「うん⋯」
「(それはいいんだけど、帰りも遅いしなんて言うか、色々心配で)」
少し寂しげに目を伏せた雪乃ちゃんはまた小さく息を吐く。
「(⋯⋯きっと六花ちゃんにも嫌な態度を取ってるでしょ?あの子)」
「え⋯?」
「(反抗期だし、思春期だし、色々難しい事が重なって、きっと六花ちゃんにも失礼な態度を取ってるんじゃないかって)」
「そんな事⋯、」
ないですよ。とは言えなかった。
実際に千冬には避けられているし、千冬はわたしともう関わりを持ちたくないのかもしれないし。
雪乃ちゃんもそれを知っていてこうして話をしているんだろう。寂しそうに困った様に笑みを浮かべる雪乃ちゃんを見てそう思った。



