「(二年になってから色々とあったんだね)」
ちゅーっとレモネードを吸う優愛は柔らかく笑った後、「(有馬くんの考えてる事はよく分かんないけど)」と眉を寄せた。
「(いきなり六花の事避けたり、でも話によれば助けてくれたり。わたし、どうして有馬くんが六花に急に冷たくなったのか全然分かんない)」
「⋯⋯聴覚障害を持つ人の近くにいるのは、大変な事だから」
「(⋯六花)」
「それに、ほら、わたし、昔っから千冬にくっついてばかりだったし、普通にウザかったんじゃないかな?」
「(でも、それにしても急にだよ⋯?六花が事故に遭ってからもずっと傍にいたのにだよ?)」
眉をこれでもかと寄せて口を八の字に曲げる優愛はこれまでもずっと親身に私の相談や悩みに寄り添ってくれていた。
⋯⋯優愛の言う通り、千冬がわたしを急に避け始めた理由が分からなくて。
この耳の事が原因なんだとは思うけど、千冬はわたしが事故に遭い聴力を失ってからも暫くの間は傍で支えてくれていた。それがある日突然避けられるようになったのだから上手く理由が見つけられないでいる。
ただ単に聴力と関係なくわたしが嫌になってしまったのかもしれないし、良い悪いではなく聴力障害を持つわたしといるのはとても覚悟のいる事だからわたしが負担だったのかもしれないし、その両方が理由かもしれない。
⋯⋯もしかしたら千冬はわたしの気持ちに気付いてて、だから避けているのかもしれないし。
だとしたら今のわたしの言動は千冬にとって迷惑なのかもしれないけど──────。
千冬が本当の理由を教えてくれるまでは、諦めたくない。
こういうしつこい所が嫌われちゃう要因だったのかなぁと自分自身が嫌になるけど、理由が分からないうちは⋯、また千冬と昔みたいに戻れる様になりたい。笑い合いたいって、諦められなくて。
そして叶うことならわたしを受け入れて欲しい。
聴覚障害者のわたしを石川六花だと見てくれるだけで嬉しいけど、出来ることなら聴覚障害者のわたしを受け入れて欲しい。



