そうして連れて来られたのは人気の無い中庭。
校舎の壁際に立つわたしの後ろには一階の廊下の窓があって、どことなく圧を感じる三人に一歩後退ればトンっと背中に窓が当たった。
「あの⋯⋯、」
「(先輩って千冬先輩の幼なじみって本当ですか?)」
「え⋯?」
「(それで耳が聞こえないって本当なんですか?)」
真ん中に立つ彼女とその両脇に立つ二人は好奇心を隠そうとせずにその瞳を向けてくる。
真ん中の彼女の話すスピードは速くて口の動きを読み取る事が難しかったけど、わたしの耳の事を口にした事はちゃんと分かった。
そしてそれが好意的なものでもない事も。
「(あー。なんて言えばいいか分かんないんですけど。ってこれ何て言ってるか分かります? )」
半笑いを浮かべる彼女たちにドクドクと速くなる心臓。途端に目の前の彼女たちが怖くなった。
「⋯⋯もう少しだけ、ゆっくり話して欲しい、です」
「(ゆっくり?)」
「口の動きで言葉を読むので」
そう説明すれば彼女はぷっと吹き出した。
「(すご、超能力みたいじゃないですか)」
読唇術は決して超能力ではないし魔法でもない。
だけど今はそれを正すよりも速くこの場から去りたい気持ちの方が強くて、話の続きを促すわたしに彼女は「単刀直入に言わせてもらいますね」と前置きをした上で言葉を続けた。



