結局千冬はわたしの家まで送ってくれて⋯というか、わたしの家が千冬の家までの通り道になっているのだけど、ここは家まで送ってくれたと言わせて欲しい。
「送ってくれてありがとう」
「(⋯⋯)」
「ありがとう」
話しかけんなという言葉通り無言を貫いたけれど、最後くらいはいいだろうと玄関の前でそう告げれば千冬は嫌そうな顔をして顎をしゃくった。
「早く家に入れ」と言いたいらしい。
本当は少しまだ喋りたかったけど、仕方ない。
これ以上千冬を足止めしてしまう訳にもいかないし。
「じゃあ、また。明日学校でね」
「(⋯⋯ああ)」
小さく手を振ったわたしに千冬が振り返してくれる事はなかったけど、それでも最後に返事をしてくれたから良しとしよう。
「じゃあ、また明日」
「(早く入れ)」
名残惜しむ様に玄関先で手を振っていれば痺れを切らした千冬の顔が段々と歪んでいくから、本気で怒られる前に急いで家の中へと入った。



