ジリジリと初夏の日差しが降り注ぎ、夏の気配が近付いて夏めくある日の放課後。

先生に提出するはずのノートをすっかり提出し忘れていたわたしは慌てて職員室まで走る。


「先生っ、ギリギリセーフですかっ⋯?」


ノート片手に息を切らして職員室のドアを潜るわたしに担当の先生は一瞬驚いた表情をした後、自身の腕時計に目線を遣ってから困った様に眉尻を下げた。


「(廊下は走ってはいけないし、ギリギリアウトだ)」

「あ、アウトっ⋯?」


まだ下校時刻は過ぎていないし。と僅かな望みを掛けてみたけれど、やっぱりアウトらしい。

そんなぁ、と項垂れるわたしを見て先生の肩がゆっくりと上下する。それはため息を吐いた仕草で。


「(まぁ、本来ならアウトだが⋯、今回だけ特別にセーフって事にしておこう)」

「っ本当ですかっ?」

「(石川は普段はきちんと提出しているしな。次回からは気をつけるように)」

「はいっ!ありがとうございます!」


ノートの提出一つとっても成績に響く為、今度からはしっかりと期日を確認しようと決意してお礼を言ってから職員室を後にした。