「ねぇ、千冬⋯」
「(⋯何?)」
「わたし、はね、嬉しいよ。千冬とこうして話せる事が」
「(⋯嬉しい?)」
「耳は聞こえなくなっちゃったけど、でも、声までは失ってない」
「(⋯⋯)」
「だからこれからもいっぱい話しかけるから、よろしく」
そう言って前を向いたわたしに千冬は冷たい目をしながら、どこかその表情に苦しみを隠している様に見えたのは気のせいだろうか。
もしもそれが気のせいなんかじゃないとすれば、その辛さと苦しみの理由は同情心だと、思っていた。
千冬はわたしが事故に遭ってからの日々をあの頃家族と同じ距離で見ていたから、聴力を失ったわたしを想って辛そうにするのだと、そう思っていた。



