どうやったら前みたいに戻れるんだろう。
千冬がわたしを嫌う理由が分からなくて、だけどなんとなく、この耳が原因なんじゃないかって思ってる。
それならもう、二度と昔みたいには戻れないかもしれない。
千冬が笑顔を見せてくれる事ももう⋯。
俯いて強く唇を噛み締めるとじわりと口内に不快な鉄の味が広がって、それと同時に浮かんでくる涙を必死に堪える。
千冬に⋯、好きな人に拒絶される事ほど怖いものはない。
だけどやっぱり、拒絶されても嫌われてしまっても、わたしの中で千冬は大切な人で。好きな人だから。
「ち、千冬が話しかけて欲しくなくても⋯、わたしは千冬と、話したい」
「(⋯⋯)」
「せっかく、同じクラスになれたんだし、隣の席だし⋯」
再度千冬の瞳がわたしの方に向けられて、ジワっと背中に嫌な汗をかいた。
慣れる事のないその瞳に、わたしはいつだって怯えている。
だけど、やっぱりわたしはどこまでも千冬のことが大好きだから、いくら千冬がわたしを疎ましく思っていても追いかけたいって思うんだ。
千冬からしたら迷惑かもしれないけど⋯。



