透明を編む 【完結】




その後一日わたしの意識は千冬に向いていて、だけど言葉を交わす事も目を合わせる事もなく放課後になった。

放課後になると千冬はさっさと教室を出てしまって「また明日」も言えなかった。

帰路を歩きながら春の空を眺めると、カラリと澄んだ空と過ごしやすい温かな気温が少しだけ勇気をくれる。

千冬と同じクラスになれるとは思ってなかったし、これからどうやってまた昔みたいに戻れるのかなんて全然分からないけど、これはチャンスだ。


せっかく同じクラスになれたんだから、少しずつでも千冬との隙間を埋めたい。


─────どうして避けるのか理由を知りたくて。今のわたしを受け入れて欲しくて。


冬が過ぎて春が今年もやってきた様に、わたしと千冬の関係もずっとこのまま凍った様に動かないなんてあって欲しくない。いつか雪解け出来ると信じている。

ふわりと目の前を舞った桜の花びらに強く思った。