わたしの朝は、ブブブ…という振動から始まる。

前日の夜にアラームをセットしてスマートフォンを枕の下に置いておくのが寝る前のルーティン。
そうすると時間になればバイブレーションがわたしを起こしてくれるから。


最初の頃こそなかなかスマートフォンの振動だけでは起きれなくてお母さんに起こしてもらうことも多かったけど、今ではすっかり慣れて朝1人で起きれるようになった。


カーテンの隙間から零れる陽の光に目を擦ってベッドから降りると、クローゼットに掛かっている制服に着替えてから一階のリビングへと向かった。

リビングに着くと、鼻腔を擽るのは朝の匂い。
香ばしいトーストと目玉焼きにサラダ。そして牛乳。
家の朝ごはんはこれと決まっている。


「(おはよう、六花)」


わたしがリビングに入った事に気付いたお母さんの口がそう動く。それに私は「おはよう」と返してダイニングテーブルに並べられた椅子へと腰を下ろした。


「(今日から二年生だな)」


斜め向かいに座り新聞を読んでいたお父さんの表情はどこか不安げだ。


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」

「(大丈夫だろうけど))」

「進級も無事に出来たし」

「(⋯⋯まぁ、六花なら大丈夫だな)」

「うん」