グローヴ侯爵家の崩壊から数日後、次期当主──侯爵にはシェリーの兄であるブライアンがつくことになった。

「お兄さまが侯爵になられるのなら安心ですね」
「あ、ああ」

 いつもの街のカフェでコーヒーを飲みながら二人は話をしているが、ジェラルドはどこか上の空でよく考え込んでいる。
 そんな様子に不満そうに口をとがらせると、ついに我慢の限界が来たのかシェリーが声をかける。

「ジェラルドさまっ!」
「わっ! すまない、考え事をしていた。悪い」

 不機嫌に目を逸らす彼女の機嫌を取ろうと、店員にデザートを注文する。
 すると、甘いものにちょっと惹かれたのかちらっとテーブルのほうを見る。
 その様子にジェラルドはほっとした様子になる。

 カフェでコーヒーを飲みながら二人は久々のデートを楽しみ、そしてお互いの近況を語り合っていた。
 だいたいがお互いの目付け役である、アリシアとセドリックのことだが、二人がなんかいい感じなんじゃないかと二人は見立てている。

「アリシアったらセドリック様のことちらっと見てたり、それにセドリック様のことをぼうっと見てたりするんですよ!」
「セドリックもアリシアとはとても仲良く話しているのを見る。あいつは女嫌いなのにだ」
「まあっ! じゃあ、もしかして……!」
「もしかするかもな」

 そんな自分たちの大切なひとたちの恋バナを勝手に妄想して楽しんでいると、次第に日も落ちてきて夕焼けが綺麗になって来る。
 カフェを出て少し歩いたところの海岸で二人は寄り添って海と夕焼けを楽しむ。