そのとき、また頭の中にモヤモヤとした映像が浮かんできた。

 いやだわ。またデジャブ?

 わたし、どうかしてしまったのかしら?

 違う意味で不安になってきた。

 それはともかく、彼の腕の傷に見覚えがあるわけはない。それどころか、彼にかぎらずどんな傷痕も思い出せるかぎりでは見たことがない。それは、わたし自身も含めてである。

 剣による傷痕だなんて、そうそう見る機会はないでしょうから。