これまでは、一度たりとも自分が生活する場所を案内してもらったことはなかった。自分の割り当てられる部屋ですら、面倒くさそうに口頭で伝えられるだけだった。わたしの理解力が残念なのか、記憶力が残念なのかはわからないけれど、たいてい迷ったりわからなかったりした。その都度、通りすがりの侍女や執事などといっただれかにきかねばならなかった。

 それはともかく、クラウスは丁寧かつ詳細な説明をしながらまわってくれた。

 だけど、ここにいるのは数日らしい。

 いまここで警備の任に当たっている大隊が違う大隊と交代するらしく、彼はその大隊とともに帝都に帰還するという。