そんな嘘で塗り固められ、ラインハルトを蔑ろにしているヨルクといっしょの空間にいても楽しいはずがない。

 だから、これまでわたしも嘘の表情と最低限のマナーで耐え忍んできた。

 ヨルクは、今日もそつのない態度でわたしに挨拶をした。それから、さっさと娘をわたしに紹介し始めた。

 もしもわたしが愛想のいい美女だったら、彼は娘そっちのけでわたしと談笑し続けるに違いない。

 想像すると可笑しくなってくる。

「娘のディアナ・ロイターです。皇子たちと同年齢ですから、皇妃殿下より二歳年長ということになりますな」

 ヨルクは、美貌に嘘っぱちの笑顔をはりつけつつ平気で嫌味をぶちかましてきた。